mizterxのブログ

数学について自分の覚書き(忘れた頃に読んでもOK)

裁定取引の仕組み

株を買う時には当然、株価の値下がりのリスクがありますよね。


そのリスクを抑えるブレーキの役目としてポートフォリオを組む場合に先物を同時に売るという選択があります。その際のキーワードが裁定取引です。これから詳しくみていきましょう。


今、株を買う元手を自己資金でなくてすべて借金で賄うとします。借金には利子がつきものですね。


ここで、前提として将来のある時点で先物の決済する際の価格を、仮に「現在の株価が将来のその時点まで時間が経過した分だけ株価に利子がついて上乗せされた価格」を目安とします。式でいいますと株価 x (1+ 利子) です。


さて実際の売買をする際の先物の価格を考えて見ましょう。


パラメータとしては現時点での株価、利率の二つ。そして実際の先物の価格が、この二つのパラメータで先ほど計算したとおりの値だとすると、その時点で決済すると株価が将来上がろうが下がろうが、損得なしになるんです!


実例で検証してみましょう。
利子20円で借金して株価が100円 将来のある時点で株価が70円にさがる場合、  先物を空売りしておく際に価格は先ほどの前提から120円ですね。 そうすると株では損しても先物で得をして、でも利子分を上乗せして借金を返済するとチャラになりますね。式でいうと-30+50-20=0  


(先物は120円で空売りしといて70円で安く買い戻すから得します)


そうするとですよ、もし先物の価格がこの仮定した120円よりも大きい場合は当然、株価が下がっても儲かることになりますよね。
例えば140円とすれば-30+70-20=20


そして逆に株価が上がった時は、先物だから権利を放棄できて、上がった分だけ儲かるわけですから(ただし手数料は引かれる)


あるいは、株と先物を正反対の売買をすればよいわけです。(株を空売り、先物を買う)


株価が上がろうが下がろうが儲かる、こんなラッキーな話はありませんね。そうはいかないわよと先物価格がこの120円の値(つまり損得0)に市場の力学が働いて落ち着くわけです。これが裁定取引。最初に先物価格の値を仮定した理由がわかりましたよね。


なお、シンプルにポイントだけに絞るために株が下がった場合のみにしてます。


さて、ここで話は前回ぜんぜん回のブラックショールズの式に戻ります。下記の龍谷大の記事の20pageと21pageをご覧ください。


https://www.math.ryukoku.ac.jp/~iida/lecture/gr/gr05/endo-okada-prs.pdf


∂f/∂SxΔS - Δf = r x〔∂f/∂S x S - 1 x f(S,t) 〕x Δt


右辺の括弧内は株価Sの株式を∂f/∂S単位買って、価格f(S,t)の派生証券を1単位売る場合のポートフォリオの価値です。
先ほどの簡単な事例が抽象的な記号になっただけで内容は同じです。


難しそうに見えますが、厳密なことはさておいて、利率と先物価格の関係がポイントそうですね。そして両辺が等しい場合は前述のように株価に利率分を上乗せしたのが先物価格になります。


ただそれは決済の時点の話ですけれども、そこまでに至る時間経過を式にしたんでしょうね。つまり時間経過とともに利率がきいて先物価格が上がっていくわけですが、それがイコールだときれいに連動。そうでない場合は歩調が乱れてるわけです。ざっくりイメージでの説明ですが。
(それは株価についても同じです。理想の株価の動きは利率に連動して順調に上がっていくわけです。)


この利子が時々刻々と効いている点は前回「現在価値へ割り引く」話でも登場しましたね。お金を借りたらもう1分後にはその分だけ利子がもう上乗せされてるんですね。怖いですね。


もう少しイメージしやすいように、Δtを左辺へ移しましょう。


∂f/∂SxΔS/Δt - Δf/Δt = r x〔∂f/∂S x S - 1 x f(S,t) 〕
(rは利率)


左辺は株価、派生証券の変化速度になるわけですね。それが右辺の利率をかけた分と歩調が合っているわけです。


そしてイコールでない場合、龍谷大の21pageにある通り、儲かっちゃうからそんな虫のいい話はありませんという式になります。


こんな感じでイメージで理解できればよしとしたいです。


そしてこれでブラックショールズの変微分方程式までたどり着いたわけです。